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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)11853号 判決 1992年4月27日

原告(反訴被告)(以下「原告」という。)

ユニオン光学株式会社

右代表者代表取締役

柳川邦衛

右訴訟代理人弁護士

沼田安弘

山口雅主

右訴訟復代理人弁護士

宮之原陽一

右輔佐人弁理士

神保欣正

被告

株式会社ベルデックス

右代表者代表取締役

寺町博

右訴訟代理人弁護士

寺西昭

被告(反訴原告)(以下「被告」という。)

信光精機株式会社

右代表者代表取締役

六川和男

右訴訟代理人弁護士

柴田耕次

右輔佐人弁理士

中澤謹之助

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  被告信光精機株式会社の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、本訴反訴ともにこれを三分し、その二を原告、その余を被告信光精機株式会社の各負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(本訴について)

一  原告の申立

1 被告らは、別紙第二目録及び同第二目録説明書記載の測定顕微鏡を製造販売してはならない。

2 被告らは、原告に対し、連帯して一三八六万二八〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3 被告株式会社ベルデックスは、原告に対し、一〇八〇万二四〇〇円及びこれに対する訴変更申立書送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

4 訴訟費用は被告らの負担とする。

5 右2及び3について仮執行の宣言

二  被告らの申立

1 主文一と同旨

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴について)

一  被告信光精機株式会社の申立

1 原告は、被告信光精機株式会社に対し、三〇〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 原告は、日本経済新聞、日経産業新聞の各全国版に各一回ずつ、別紙第三目録記載の文案により、標題及び当事者双方の社名と原告代表取締役名は四号活字、その他の部分は五号活字を使用した広告を掲載せよ。

3 訴訟費用は原告の負担とする。

4 右1について仮執行の宣言

二  原告の申立

1 主文二と同旨

2 訴訟費用は被告信光精機株式会社の負担とする。

第二  当事者の主張

(本訴について)

一  請求の原因

不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求

1 原告は、工業用光学機器メーカーとして著名な、東京証券取引所の第二部に上場している会社である。原告は、昭和三〇年以降、別紙第一目録及び同第一目録説明書記載の測定顕微鏡(以下「原告商品」という。)を製造販売している。

2 原告商品は、別紙第一目録及び同第一目録説明書記載のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡である。その外観上の特徴は、次のとおりである。

(一) 偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向かってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向かって正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状よりなる支柱30を、背面を同一線上に揃えて立設した点

(二) この支柱30の正面に、平面を水平面に底面を後下向き斜面にそれぞれ形成し両側面には底面の後下向き斜面と略平行の位置関係を保って下方前後にコロ状の微動ハンドル47a、47bと車輪状の粗動ハンドル46a、47bをそれぞれ突出した角ブロック状のブラケット45を接合し、このブラケット45の正面に、上下端面を水平面とした断面蒲鉾形の垂直柱の根本より円柱状の傾斜柱をレ状に分岐した形状の鏡筒40を段差が生じることなく連続的に接合し、この鏡筒40の傾斜柱には、やや先細りの円柱状にして先端に接眼レンズ42を接合した単眼チューブ41を外径に段差を生じることなく両者相まって煙草のパイプ状の形状となるよう連続的に接合した点

3 原告商品の形態は、昭和六一年一〇月には、原告商品の販売について、原告の商品であることを示す表示として、日本全国にわたって、取引者及び需要者間に広く認識されるに至っている。すなわち、

(一) 原告商品には、右2で述べた外観上の特徴の故に形態上の特異性がある。

第一に、原告商品の外観上の特徴は、原告商品の技術的機能から必然的に由来する唯一不可避のものではなく、全くの選択によるものである。測定顕微鏡において技術的機能から必然的に由来する形態とは、原告商品の右特徴との関連で述べれば、装置全体を支持可能な形状の台座より支柱が垂直に起立され、接眼レンズが正面に、対物レンズが底面に、鏡筒を上下動させるためのハンドルが側面にそれぞれ設けられた形状の鏡筒部がこの支柱正面に接合されるという上位概念的に把握されるものにとどまり、その具体的形態については、他社商品との差別化、需要者の嗜好への対応を考慮して多様のものを選択し得る余地が十分に存する。

第二に、右の外観上の特徴は、決して無秩序に選択されたものではなく、需要者の嗜好への対応を考慮したうえで、その注意を引くべくデザイン的に工夫を施して創作されたものであり、外観上の特徴をもって取引者及び需要者の注意を喚起する作用を果たすものである。原告商品においては、台座及び支柱よりなるボデー部の正面から背面、底面より平面にかけては絞り込み方向に向かう流れるような軽快なラインが看取されるとともに、鏡筒部の背面より正面にかけては斜め上方に向かって躍動するかのようなラインが前後二段にわたって連続的に看取され、全体として台座正面に安定感を持たせつつ、他の方向には躍動を加味した軽快感を持たせたスマートかつコンパクトな印象を看者に与え、この印象は取引者及び需要者の脳裏に深く焼き付けられる。

第三に、右の外観上の特徴は、既存の形態を選択したものではなく、原告独自の創作に係るものであり、客観的にみても原告商品独自のものであって、現在までに市販された他社の同種商品には右の外観上の特徴を備えるものは皆無である。

(二) 原告商品の形態は、昭和三〇年から今日に至るまで約三〇年間にわたり、基本的な変更をすることなく、継続的かつ独占的に使用されてきた。

(三) 原告商品は、昭和三〇年から今日に至るまで、合計約一万五一二九台生産され、販売されている。

(四) 原告は、その間多大の費用をかけて原告商品の宣伝をした。また、その特異な形態は、専門文献に引用されるほどに著名である。

(五) 測定顕微鏡のメーカーは、その数が限られ数社にすぎない。そして、各メーカーは、独自の形態上の特徴を工夫しているので、形態をみれば、どこのメーカーの商品か推測することができるものである。

4(一) 被告信光精機株式会社(以下「被告信光精機」という。)は、精密機械光学機器や測定機の製造販売を業とする会社であるが、原告の下請企業として原告から発注を受け、原告商品の部品の加工からその下組に至る製造を行っている。被告信光精機は、この発注の過程において、原告から治具、型、図面の貸与を受け、また、部品の支給を受け、更に、製造上のノウハウの開示を受けてきた。被告株式会社ベルデックス(旧商号 東邦電子工業株式会社。以下「被告ベルデックス」という。)は、光学機械器具及び電子装置の製造販売を業とする会社であるが、原告の製造販売する光学機械器具の電子部品を製造し、原告に納入している。そして、被告らは、いずれも原告の下請協力会の会員である。

(二) 被告らは、原告商品に酷似した測定顕微鏡を製造販売しようと企て、昭和六一年一〇月以降、別紙第二目録及び同第二目録説明書記載の測定顕微鏡(以下「被告商品」という。)を製造販売している。

5 被告商品は、別紙第二目録及び同第二目録説明書記載のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡である。その外観上の特徴は、次のとおりである。

(一) 偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向かってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向かって正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状よりなる支柱30、背面を同一線上に揃えて立設した点

(二) この支柱30の正面に、平面を水平面に底面を後下向き斜面にそれぞれ形成し両側面には底面の後下向き斜面と略平行の位置関係を保って下方前後にコロ状の微動ハンドル47a、47bと車輪状の粗動ハンドル46a、46bをそれぞれ突出した角ブロック状のブラケット45を接合し、このブラケット45の正面に、上下端面を水平面とした断面蒲鉾形の垂直柱の根本より円柱状の傾斜柱をレ状に分岐した形状の鏡筒40を段差が生じることなく連続的に接合し、この鏡筒40の傾斜柱には、やや先細りの円柱上にして先端に接眼レンズ42を接合した単眼チューブ41を外径に段差を生じることなく両者相まって煙草のパイプ状の形状となるよう連続的に接合した点

6(一) 被告商品の右外観上の特徴は、原告商品のそれと全く同一であるばかりでなく、両者は、全体的な外観の細部にわたっても酷似しており、外観上紛らわしく、両者を時と所を違えて離隔的に観察した場合に、需要者がその出所について混同を生じることはもち論、通常の取引上の注意力をもって対比観察した場合でも、混同を生じるおそれがあるものであって、両者の形態は、類似している。

(二) また、近年測定顕微鏡の分野においても、OEM化が一般的となっている状況からすれば、被告商品をみて原告商品のOEM商品と判断するおそれが大である。このような面からも、被告商品が原告商品そのものであるとの誤認混同が生じている。

7 原告商品と被告商品とは、市場において、ほぼ完全な競合関係にあり、被告商品が原告商品と混同されることにより、原告は、その営業上の利益を現に害され、また、今後継続して害されるおそれがある。

8 よって、原告は、不正競争防止法一条一項一号の規定に基づき、被告らに対し、被告商品の製造販売行為の差止めを求める。

不正競争防止法一条の二の規定に基づく請求

1 被告らは、被告商品の製造販売が前記不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求に述べる不正の競業になることを知りながら、昭和六一年一〇月以降、右各行為を行い、原告の営業上の利益を害したものであるから、原告に対し、右各行為によって原告が被った損害を賠償すべき義務がある。

2 原、被告らは、市場において、原、被告商品の販売について完全な競業関係にあり、被告商品は、原告商品のコピー商品として販売されているから、被告らが被告商品の販売により挙げた利益が、原告が被った損害というべきである。そして、被告らが挙げた利益は、次のとおりである。

(一) 原告商品中、SM―25は、定価六三万二〇〇〇円、卸価格四四万二四〇〇円、製造原価二四万〇四六六円である。すなわち、次の計算式のとおり、卸価格は、定価の0.70、製造原価は定価の0.38である。

442,400÷632,000=0.70

240,466÷632,000=0.38

SM―50は、定価七〇万一〇〇〇円、卸価格四九万〇七〇〇円、製造原価二九万一三六五円である。

すなわち、次の計算式のとおり、卸価格は定価の0.70、製造原価は定価の0.42である。

490,700÷701,000=0.70

291,365÷701,000=0.42

そして、SM―25とSM―50の製造比率は、七対三である。

(二) 被告商品中、SCM―M1の定価は五六万円、SCM―M3の定価は六五万円である。そこで、右定価から、被告商品の卸価格及び製造原価を算定すると、次の計算式のとおり、SCM―M1の卸価格は三九万二〇〇〇円、同製造原価は二一万二八〇〇円、SCM―M3の卸価格は四五万五〇〇〇円、同製造原価は二七万三〇〇〇円となる。

560,000×0.7=392,000

560,000×0.38=212,800

650,000×0.7=455,000

650,000×0.42=273,000

(三) 被告らは、被告商品を七七台製造販売したものである。被告商品の内訳は、次の計算式のとおり、SCM―M1は五四台、SCM―M3は二三台である。

77×0.7=54

77×0.3=23

したがって、被告らの利益は、次の計算式のとおり、合計一三八六万二八〇〇円である。

(392,000−212,800)×54=9,676,800

(455,000−273,000)×23=4,186,000

9,676,800+4,186,000=13,862,800

(四) 被告ベルデックスは、右(三)の他、昭和六二年九月から平成元年一一月までの間に、被告商品六〇台を製造販売したものである。被告商品の内訳は、次の計算式のとおり、SCM―M1は四二台、SCM―M3は一八台である。

60×0.7=42

60×0.3=18

したがって、被告ベルテックスの利益は、次の計算式のとおり、合計一〇八〇万二四〇〇円である。

(392,000−212,800)×42=7,526,400

(455,000−273,000)×18=3,276,000

7,526,400+3,276,000=10,802,400

3 よって、原告は、不正競争防止法一条の二第一項の規定に基づき、被告らに対し、一三八六万二八〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払い、被告ベルデックスに対し、一〇八〇万二四〇〇円及びこれに対する訴変更申立書送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  被告ベルデックスの答弁

請求の原因(不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求)について

1 1のうち、原告が工業用光学機器メーカーであること、東京証券取引所の第二部に上場している会社であること及び原告商品を製造販売していることは認めるが、その余の事実は知らない。

2 2のうち、原告商品が原告主張の外観及び構造を有していることは認めるが、これらの外観が原告商品の特徴であるとの主張は否認する。

3 3のうち、原告商品の形態が原告の商品であることを示す表示として広く認識されるに至っていることは否認する。3(一)、(二)及び(五)は否認する。3(三)及び(四)は知らない。

4 4(一)のうち、被告信光精機に関する事実中、型等の貸与、部品の支給、ノウハウの開示の事実は知らない。その余は認める。被告ベルテックスに関する事実は認める。4(二)は否認する。

5 5については、別紙第二目録及び同第二目録説明書記載のとおり外観及び構造を有する被告商品が一部原告主張の外観を有していることは認める。

6 6は否認する。

7 7は否認する。

請求の原因(不正競争防止法一条の二の規定に基づく請求)について

1 1は否認する。

2 2(一)は知らない。2(二)は否認する。2(三)のうち、被告商品の製造数は認め、その余は否認する。2(四)は否認する。

三  被告信光精機の答弁

請求の原因(不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求)について

1 1のうち、原告が著名な会社であることは知らない。その余は認める。

2 2のうち、原告商品が別紙第一目録及び同第一目録説明書記載の外観及び構造を有する測定顕微鏡であることは認めるが、それらが外観上の特徴とする点は否認する。

3 3のうち、原告商品の形態が、原告の商品であることを示す表示として、取引者及び需要者間に広く認識されるに至っていることは否認する。3(一)は否認する。3(二)は知らない。原告が原告商品の基本的形態の一つとして主張するような支柱の形状の商品は、四、五年前から販売されているにすぎない。3(三)は知らない。原告主張の生産台数には他の形態のものも含まれている。3(四)は知らない。3(五)のうち、測定顕微鏡のメーカーが数社であることは認めるが、その余は否認する。

4 4(一)のうち、被告信光精機が精密機械光学機器や測定機の製造販売を業とする会社であり、原告の下請企業で、下請協力会の会員であったことは認めるが、その余は否認する。被告が下請として製造し、治具、図面の貸与を受けたのは、本件の原告商品ではなく、他の商品(原告の呼称で「シグメット」、「ハイソメット」といわれるもの)である。4(二)のうち、被告信光精機が原告商品と酷似した測定顕微鏡を製造販売しようと企てたとすることは否認する。被告信光精機は、被告商品七七台を昭和六一年一〇月に一回限り製造したにすぎない。

5 5のうち、被告商品が別紙第二目録及び同第二目録説明書記載のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡であることは認めるが、それらが外観上の特徴とすることは否認する。それらは、一般的な形態である。5(一)及び(二)は認める。

6 6(一)は否認する。6(二)のうち、近年測定顕微鏡の分野においても、OEM化が一般的になっている状況であることは認めるが、その余は否認する。

7 7は知らない。

請求の原因(不正競争防止法一条の二の規定に基づく請求)について

1 1は否認する。

2 2(一)は知らない。2(二)は否認する。2(三)のうち、被告信光精機が被告商品を七七台製造したことは認めるが、M1とM3の内訳(顕微鏡のベースの上に装着する測定ステージの種類、すなわち、二五mm作動のものか、五〇mm作動のものかによってM1とM3に区分される。)は知らない。

四  被告信光精機の主張

1 商品の形態が商品表示となりうることは、一般論としては承認されている。しかし、商品の形態は、本来的な表示ではないから、取引界において知られることによって表示としての機能を現実に帯有するに至らなければ、商品表示とは認められないし、周知といえる程度にまで需要者に知れわたらなければ、不正競争防止法一条一項一号の規定による保護を受けることはできない。そして、一般的に、商品の形態自体が保護を受けうる表示としての機能を現実に帯有するためには、その条件として、自他識別力を有していることが要求される。その判断のためには、その形態が特定の商品形態として永年継続的かつ独占的に使用されてきたか否か、その形態事態が強力に宣伝されたか否かなどの諸要素のほかに、その形態が極めて特殊かつ独自なものであるか否かについて判断することが必要である。形態がありきたりのものであるような場合には、その形態は、自他識別力を備えているとはいえないからである。このことは、不正競争防止法が競業の自由を認め、工業所有権による保護のない製品や外観の模倣は、原則的に自由であるということを建前としていることからも肯定される。

ところで、本件で問題とされている測定顕微鏡は、台座と、この台座より垂直に樹立された支柱と、この支柱に支持されているブラケットと、このブラケットに接合され、正面に接眼レンズを、底面に対物レンズを有する鏡筒と、この鏡筒の側面に位置し、これを上下動させるハンドルを備えているが、その形態は、極めてありふれたものであって(<書証番号略>)、原告が原告商品について外観上の特徴として主張する箇所及び部分は、到底自他商品識別力をもつ形態ということができない。そこで、仮に原告商品の形態に何らかの自他識別力があるとするならば、それは、原告商品の右以外の他の箇所に求めなければならない。そして、ここにいう他の箇所とは、取引者及び需要者にとって極めて印象深く認識されやすい箇所でなければならない。

以上の観点に立って原告商品をみると、最も認識されやすい第一の箇所として、台座の後端に樹立されている支柱の形態が挙げられる。これは、この種測定顕微鏡を観察するとき、最初に看者を強く引き付ける箇所であるからである。もっとも、前記のとおり台座の後端に支柱を樹立することは、ありきたりの形態であるから、その支柱の形態の特異性が注目されなければならない。そして、原告商品の支柱の特異性は、その背面が下部から全高の約半分の高さまでをほぼ垂直とし、これより上部を正面側に向かってほぼ直線的に傾斜させた点、下部より約六分の一の高さの位置から約二分の一の高さの位置にわたる長さと、奥行約半分の位置から支柱の幅の約三分の一の幅をもって長孔が窄ってある点の二点にある。次に認識されやすい第二の箇所として台座が挙げられる。これは、装置全体を支持するものであり、また、支持するに足りる形状とされている必要があるからであって、もし、これが貧弱な形態であれば、商品機能に疑いが持たれるといった基本的な箇所であるからである。そして、原告商品における台座の形態の特異性を考えるとき、この台座は、その両側面において、その後方約三分の一の部分より弧状に幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施しているということである。また、台座の正面にはメインスイッチとパイロットランプが、台座の側面には調光つまみが、台座の側面の後方にはスイッチ・プラグ・ソケット類がそれぞれ存するというように、台座の周面のほぼ全体にわたってスイッチその他が配置してあることも重要な形態である。これらスイッチ類は、使用者が常に自らの手によって操作するものであり、その存在箇所は、強く認識される。更に、台座の正面は、広い領域にわたって、断面をフ字状とする窪みを持つ形態となっている。台座の正面は、この種商品を全体的にみるとき、使用者に顕著に認識される箇所である。以上の各点が、原告商品における自他識別力を備えた形態であるといえる。原告主張のような、ブラケットの表面を水平に、底面を後下向き傾斜面とする形態、ブラケットの両側面に必要なハンドルを突出する形態、ブラケットの正面にある垂直柱より鏡筒をレ字状に分岐する形態、鏡筒の傾斜柱の先端に単眼チューブを接合する形態などは、いずれもこの種測定顕微鏡ではありふれた形態であり(<書証番号略>)、これらの形態からは、自他識別力は何ら生じるものではない。

2 次いで、原告商品と被告商品とを比較し、両者に誤認混同を生ぜしめるような類似性があるかどうかについて検討する。

(一) 台座の形態を平面からみると、原告商品では、全体が丸みを持つ形態が強く印象付けられるのに対し、被告商品では、各角部分及び稜線箇所が角とされているため、全体的に角張った形態として強く印象付けられている。すなわち、両者は、台座の形態においてその差が強く認識される。

(二) 支柱の形態を側面からみると、原告商品では、その支柱に窄設されている長孔の存在が強烈に印象付けられるが、被告商品では、このような長孔は存在しないので、原告商品から受けるような印象を全く受けない。また、原告商品の支柱は、その背面の傾斜面が支柱の高さのほぼ半分の高さから上方に存在しているのに対し、被告商品の支柱は、その背面の傾斜面が支柱の高さのほぼ六分の一の高さから上方に存在しており、したがって、原告商品の支柱は、全体としてずんぐりした形態の印象を受けるのに対し、被告商品の支柱は、逆にすんなりした形態の印象を強く受ける。

(三) 台座の正面の形態は、原告商品では、スイッチ類やツマミ類を台座の正面及び両側面にわたって分散した形態であるのに対し、被告商品では、台座の正面のみにスイッチ類やツマミ類をパネルを用いて配置させた形態である。また、原告商品は、台座正面のほぼ全域にわたる広さをもって、断面をフ字状とする窪みをもつ形態となっている。被告商品は、このような窪みのない形態であり、原告商品の前記した窪みに対応する箇所は、四か所でネジ止めされたパネルが位置する形態となっている。更に、被告商品では、台座の正面における下縁は、正面からみて両端を半円弧状とする横長の窪みをもつ形態としている。したがって、操作性や形態において、両者は、顕著に相違するため、認識の相違は極めて大きい。

(四) 以上の理由から、被告商品は、原告商品の自他識別力を備えているとみなされる形態と顕著に相違するということができ、したがって、両商品を時と所を変えて観察しても、取引者及び需要者間で混同を生じるようなことはない。また、両商品を並べて対比観察した場合でも、両商品の形態上の差は歴然としている。

(五) 特に、この種商品は、いわゆる消耗品ではないこと、一台が約六〇万円といった極めて高価なものであること、この種測定顕微鏡の使用目的上、その需要者は相当の知識を備えた技術者であることなどから明らかなことであるが、この種商品の需要者は、単にその形態を一見しただけで商品を選択購入するのではなく、その機能、出所などを多くの会社のカタログその他を取り寄せて相応に検討し、これを決するのが通常である。そのため、形態自体の出所識別力は、相対的に低くならざるをえないものである。右の観点に立って判断しても、原告商品と被告商品とは、その形態上特別な相違点が存在するものと意識される。

(六) 更に、仮に原告商品に原告が主張するような特異性があり、それが被告商品と共通するとしても、この種商品が高性能の技術から構成されている測定顕微鏡であることからすれば、需要者は、その形態の背後にある技術的機能の説明を受け、これを理解したうえで購入するものであって、当初から技術を離れて形態自体に着目してその商品の出所を信用して購入することはほとんどないと考えられるので、両商品の特異性が共通しているからといって、直ちに両商品に混同が生じるおそれがあるとはいえない。

3 原告は、原告商品の外観上の特徴として、ボデー部の正面から背面、底面より平面にかけてのライン、鏡筒部の背面より正面にかけてのラインを主張している。しかし、このようなラインは、指摘されて初めて気付くようなラインであり、注意深く、かつ、微細に観察しなければ、容易に見落してしまう程度のものであって、原告が主張するように需要者らの脳裏に深く焼き付けられるような形態ではなく、また、他の測定顕微鏡と比較して形態上特別の相違点として意識されるほどのものでもない。したがって、原告商品は、このラインの存在をもって出所表示機能を備えているとはいえない。

4 被告信光精機は、被告商品を七七台製造したが、その後その製造を中止しており、今後も製造する意志はない。同被告は、不正競争行為をなすものでないから、原告の同被告に対する差止請求権は消滅した。

5 仮に被告信光精機の行為が不正競争防止法一条一項一号の規定に該当するとしても、同被告が製造した被告商品七七台の収支計算は、次のとおり、約二五四万円以上の欠損となっている。

(一) 被告ベルデックスは、被告信光精機を相手方として、東京地裁昭和六二年(ヨ)第一三九五号仮処分申請事件について仮処分決定を得て、昭和六二年三月一八日にSCM測定顕微鏡(完成品及び仕掛品)七二台を執行官保管とした。

(二) 被告ベルテックスと被告信光精機とは、昭和六二年五月二六日、次のとおりの和解契約を締結した。

(1) 被告信光精機は、被告ベルデックスに対し、SCM測定顕微鏡及びその附属品等七七台セットの仕掛品を引き渡す。

(2) 被告ベルデックスは、被告信光精機に対し、契約金二三一〇万円及び追加加工賃等一〇四万二〇〇〇円の合計二四一四万二〇〇〇円から支給品、不良部品及び未加工部分に相当する金額合計一二三六万九〇〇〇円を控除した一一七七万三〇〇〇円(このうち七〇〇万円は、前受金として受領済みの約束手形を充当)を昭和六二年六月二五日に支払う(残金四七七万三〇〇〇円)。

(三) 被告信光精機は、前受金として受け取っていた約束手形を次のように割り引き、二一万三〇八一円の利息を支払った。

(割引銀行) (額面金額) (日数)

(利率) (割引利息)

埼玉銀行 金五〇〇万円 一八三日

六% 一五万〇四一〇円

巣鴨信用金庫 二〇〇万円 一八三日

6.25% 六万二六七一円

(四) その結果、被告信光精機が一台当たり取得した価格は、次のとおり一五万〇一二九円である。

11,559,919(円)÷77(台)

=150,129(円)

(五) これに対して、原価は、部品費が一台当たり一五万四〇五四円であり、部品費だけで、三九二五円の欠損となる。

(六) 更に、原価として、組立費、電装費及びレンズ調整費(合計約一万円程度必要)が加わり、その他継続生産を打切り、七七台で製造を中止しているため、開発費一四七万六〇〇〇円をこれに加算すると、合計約二五四万円以上の欠損となる。

五  被告信光精機の主張に対する原告の反論

1 1の主張について

被告信光精機は、本件で問題とされている測定顕微鏡は、台座と、この台座より垂直に樹立された支柱と、この支柱に支持されているブラケットと、このブラケットに接合され、正面に接眼レンズを底面に対物レンズを有する鏡筒と、この鏡筒の側面に位置し、これを上下動させるハンドルを備えているが、その形態は、極めてありふれたものである旨主張する。しかし、同被告の主張する右形態が極めてありふれていることは、原告も認めていることである。もっとも、右形態は、形態といっても上位概念的に把握されるアウトラインにすぎず、正確には構造というべき範疇のものであり、それを具体化した具体的形態には、ありきたりでない多様のものが創作可能であって、自他商品識別力が生じる余地は十分存するものである。商品は、機能上の制約により、外観に共通のアウトラインが存するところ、原告は、右機能上の制約より生ずるアウトラインを前提としたうえで、その制約の中で創作した原告商品の外観上の特徴は、請求の原因(不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求)2(一)及び(二)の点にあり、それが多年にわたる独占的使用、販売実績及び広告宣伝活動により自他商品識別力を帯有するに至った旨主張しているのである。なお、同被告が提出する<書証番号略>には、このような外観的特徴を有する測定顕微鏡は何ら記載されておらず、これらの存在は、原告商品の外観及び形態上の特異性に何ら影響を及ぼすものではない。

2 2の主張について

被告信光精機は、原告商品と被告商品とは、台座の角及び稜線箇所、支柱の長孔の有無及び傾斜面の出発位置、台座におけるスイッチ類の配置及び正面の窪みの有無などが相違するから、両者は、非類似であると主張する。しかしながら、被告商品は、原告が主張する原告商品の外観上の特徴をことごとく備え、しかも、寸法関係に至るまでそっくりそのままである。仮に右のような相違点があったとしてもこれらは、両者の物理的な同一性に影響を与えるものの、取引者又は需要者が相紛らわしいと感じる類似性には何ら影響を及ぼさない微差にとどまる。

3 3の主張について

原告は、原告商品の外観上の特徴として、被告信光精機が主張する点のみを主張しているのではない。原告は、原告商品の外観上の特徴は、請求の原因(不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく請求)2(一)及び(二)の点にあると主張しているのである。ただ、原告は、この外観上の特徴が無秩序に選択されたものではなく、需要者らの注意を喚起するためにデザイン的に工夫を施して創作されたことを例証するために、同被告のいうラインの存在を挙げたにすぎない。

4 4及び5の主張について

被告信光精機の主張は争う。

(反訴について)

一  請求の原因

1 被告信光精機は、精密機械光学機器や測定機の製造販売を業とし、原告は、光学機械器具や測定機械の製造販売を業としており、両者は、その商品の名称は別として、同種商品(測定顕微鏡)をともに全国に販売し、現に競争関係にある。

2 原告代表者は、昭和六二年一〇月初め頃、日経産業新聞の記者大村泰に対し、被告信光精機が製造販売した被告商品について、(一)「外観のよく似た製品を製造販売するのは違法だ。」、(二)「ユニオン光学独特の形状を真似たのはだれが見ても明らかだ。下請の行為としては、道議上許せない。」と話した。しかしながら、不正競争防止法は、競業の自由を認め、工業所有権による保護のない製品や外観の模倣を原則的に自由としているのであり、かつ、原告の製造販売する原告商品は、その形態が商品の出所表示機能を帯有するほどの特異性を有せず、極めてありふれたものであって、自他商品識別力を何ら生ずるものでなく、また、両者の形態上の差は、歴然としていて、誤認混同を生ずる類似性を有しないものである。原告代表者が前記のように話したことは、全く虚偽の事実を陳述したものといわなければならない。

3 原告代表者が大村記者に対して右の陳述をした結果、昭和六二年一〇月二日付日経産業新聞全国版一一頁に、「類似品どこまで違法?」の表題のもとに、「ユニオン光学下請2社提訴」、「法と道義はざまで論争」、「企業防衛のあり方問う」とし、「ユニオン光学が形状の類似した測定顕微鏡を売っている下請け二社を東京地裁に提訴、業界関係者の間で話題を集めている」、「ユニオンに同情の声」、「業界ではユニオンに肩を持つ声が多い」、「海外摩擦にも波紋」とし、「ここ一〇年ほど、『知的所有権を持っていなくても製品のデザインは保護されるべきだ』と解釈する判例が増えてきている。『欧米の発案をまねして安くつくり、大量に輸出するのはアンフェア(不公平)だ』とか『著作権やデザインのようなモノ以外の権利を軽視している』と海外から非難を浴びているわが国産業界。」という記事が掲載されたため、被告信光精機は、その信用を害され、営業上の利益を侵害されるに至った。

4 右のような新聞紙上への公表等は、被告信光精機の被告商品の製造販売行為が不正競争防止法一条一項一号の規定に違反することについて、高度の蓋然性を有すると信じた後においてされるべきものであり、これらの注意義務も尽くさないで、漫然新聞紙上に公表するのは、明らかに同被告の名誉と信用を毀損し、営業妨害をするものである。この名誉と信用の毀損を償うためには、三〇〇万円の支払いと謝罪広告の掲載が必要である。

5 よって、被告信光精機は、不正競争防止法一条一項六号、一条の二第一、第三項(平成二年法律第六六号による改正前)の規定に基づき、原告に対し、慰藉料三〇〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いと別紙第三目録記載の謝罪広告の掲載を求める。

二  原告の答弁

1 請求の原因1は認める。

2 同2のうち、原告代表者が、日経産業新聞の記者大村泰に対し、被告商品について話をしたことは認めるが、その余は否認する。

3 同3のうち、主張のような記事が掲載されたことは認めるが、その余は否認する。

4 同4は否認する。

第三  証拠関係<省略>

理由

第一本訴について

一原告が別紙第一目録及び同第一目録説明書記載の測定顕微鏡(原告商品)を製造販売していること、被告らが別紙第二目録及び同第二目録説明書記載の測定顕微鏡(被告商品)七七台を製造又は販売したことは、当事者間に争いがない。

二原告は、原告商品の形態は原告の商品たることを示す表示であるところ、被告商品の形態は原告商品の形態と類似している旨主張するので、まず、原告の右主張について判断する。

1  原告は、原告商品の形態の特徴は、第一に、偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向かってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向かって正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状によりなる支柱30を、背面を同一線上に揃えて立設した点にあるところ、被告商品の形態も、右と同一の特徴を有する旨主張する。

2 そこで、審案するに、前示当事者間に争いのない原告商品の形態を表示する別紙第一目録及び同第一目録説明書の記載によれば、原告商品は、台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなるものであって、原告が原告商品の形態の特徴として第一に主張する点は、ボデー部に関するものであるところ、後に認定する原、被告商品の形態上の相違を捨象すれば、原告商品は、原告が右に主張するような形態を有し、被告商品も、原告商品ほどに各稜線箇所に丸みはなく、どちらかといえば、角ばった感じがするものの、全体的には原告の主張するような形態を有するものと認められ、その限度においては、両商品の形態に類似性があるものといえる。しかしながら、別紙第一目録及び同第一目録説明書の記載によれば、原告商品のボデー部を形成している台座10の正面には、電源を投入するためのメインスイッチ13が右方に、この投入状態を視認するためのパイロットランプ14が左方にそれぞれ並設され、台座10の右側面には、反射若しくは斜光照明を調光するための調光つまみ15、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17、透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次コード用ソケット19が前方より後方に向かって横一列に順次並設され、台座10の左側面には、透過若しくは斜光照明を調光するための調光つまみ16、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18、装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が前方より後方に向かって横一列に順次並設され、台座10の背面中央には、被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この右上にはヒューズホルダー21が設けられ、台座10の平面には、支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられ、台座10の底面には、装置全体を支持するためのゴム足11が突設されており、また、支柱30の正面には、鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられ、支柱30の平面には、反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられている。これに対して、前示当事者間に争いのない被告商品の形態を表示する別紙第二目録及び同第二目録説明書の記載によれば、被告商品のボデー部を形成している台座10の正面には、両側左右端に斜光照明を調光するための調光つまみ16及び反射若しくは透過照明を調光するための調光つまみ16が、この両つまみ間内側の左右に斜光照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18及び反射若しくは透過照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17が、更にその中央に電源を投入するためのパイロットランプ兼用のメインスイツチ13がそれぞれ横一列に並設され、台座10の背面中央には、被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この右上にヒューズホルダー21が、右下に装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が、左下に透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次コード用ソケット19がそれぞれ設けられ、台座10の平面には、支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられ、台座10の底面には、装置全体を支持するためのゴム足11が突設されており、また、支柱30の正面には、鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられ、支柱30の平面には、反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられている。ところで、別紙第一目録及び同第一目録説明書並びに同第二目録及び同第二目録説明書の記載によれば、原、被告商品の台座10の正面は、看者の注意を引く部分、つまり、要部であると認められるところ、これを両商品について対比するに、両商品の台座10の正面の形態は、前認定のとおり、原告商品では、メインスイッチ13が右方に、パイロットランプ14が左方に並設されているのに対し、被告商品では、調光つまみ16、16が、この両つまみ間内側の左右にスイッチ18、17が、更にその中央にメインスイッチ13がそれぞれ横一列に並設されているほか、原告商品では、断面をフ字状とする窪みを持つ形態であるのに対し、被告商品では、そのような窪みのない、パネルを用いてスイッチ類を並設した形態である。右の両商品の要部の形態の相違は、この種商品の取引者又は需要者において、両商品を異なる商品であると認識するに足りるものと認められる。次に、原、被告商品の支柱30の形態に関する前認定の事実によれば、両商品の形態は、その認定の限度において類似しているものと認められる。しかしながら、別紙第一目録及び同第一目録説明書並びに同第二目録及び同第二目録説明書の記載によれば、原、被告商品の支柱30の背面及び側面は、看者の注意を引く部分、つまり、要部であると認められるところ、これを両商品について対比するに、両商品の支柱30の背面の形態は、原告商品では、背面の下部から全高の約半分の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させているのに対し、被告商品では、背面の下部から全高の約五分の一の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させており、また、両商品の支柱30の側面の形態は、原告商品では、長孔が窄設されているのに対し、被告商品では、このような長孔が存しないものである。右の両商品の要部の形態の相違は、この種商品の取引者又は需要者において、両商品を異なる商品であると認識するに足りるものと認められる。以上の認定判断によれば、仮に原告商品の形態が原告の商品たることを示す表示であると認められるとしても、両商品の形態は、そのほかの細部にわたる形態の類否について検討を加えるまでもなく、その要部において類似するものとは認められず、また、両商品を全体的に観察しても、類似しないものと認められる。

3  原告は、被告商品は、原告が主張する原告商品の外観上の特徴をことごとく備え、しかも、寸法関係に至るまでそっくりそのままであり、仮に台座や支柱に相違点があったとしても、これらは、両者の物理的な同一性に影響を与えるものの、取引者又は需要者が相紛らわしいと感じる類似性には何ら影響を及ぼさない微差にとどまる旨主張する。しかしながら、右2の認定判断によれば、原、被告商品の台座や支柱の形態の相違点は、右にいう微差にとどまるものとは認められず、したがって、原告の右主張は、採用することができない。なお、証人鈴木岩男は、被告らは、原告の下請企業として、原告商品を製造するために原告から交付されていた金型を用いて被告商品を製造したとの趣旨の供述をするが、原、被告商品の台座及び支柱の形態の相違に関する前認定の事実によると、少なくとも、被告商品の台座及び支柱は、原告商品の台座及び支柱の金型を用いて製造されたものでないことは明らかであって、証人鈴木岩男の右供述は、台座及び支柱に関しては採用の限りではなく、両商品の形態の相違に関する前認定を左右しない。また証人鈴木岩男の証言及び<書証番号略>(原告と被告信光精機との間においては、成立に争いがない。)によれば、同被告の前代表者六川善一は、昭和六二年四月二四日、原告代表者に対し、本件に関して、原告の信頼を裏切り、申し訳けない旨の詫び状を差し出したことが認められるが、その内容に照らし、同被告の前代表者が、具体的にどのような事実について詫びているのか必ずしも明らかでなく、少なくとも、同被告の行為が、類似性を含め、不正競争防止法一条一項一号の規定に該当することを自認しているものとは認められず、右詫び状を差し出した事実も、両商品の形態の相違に関する前認定を左右するものではない。

三原告は、原告商品と被告商品とは、市場において、ほぼ完全な競合関係にあり、被告商品は原告商品と混同されている旨主張するので、原告の右主張についても判断することとする。

被告らが被告商品を製造販売して原告商品と混同を生ぜしめているとの事実を認めるに足りる証拠はない。かえって、被告信光精機代表者六川和男尋問の結果によれば、被告商品は、すべて取引者又は需要者からの注文書による受注生産によって製造販売されてきたものであることが認められ、右認定の事実によると、取引者又は需要者において、原告から原告商品を購入するつもりであったのに、商品の形態の類似の故に、被告らから被告商品を購入してしまうというような商品の出所の混同を来すということは、およそありえないものといわざるをえない。もっとも、証人鈴木岩男の証言によれば、原告代表者が韓国のある工場を訪問した際、工場長から、使用している八〇台の測定顕微鏡はすべて原告商品である旨説明を受けたが、その中に被告商品が一〇台ほど含まれていたという事実があったことが認められ、右認定の事実によると、韓国の工場の工場長が被告商品を原告商品であると誤信していたものと解されるが、右証人のその余の供述部分によるも、その理由が両商品の形態の類似性によるものであるかどうか明らかでなく、右証人の証言から直ちに混同の事実を認定することは困難である。なお、右証人は、両商品は形状が似ているから混同のおそれがあるとも供述するところであるが、右供述は、単に右証人の考えを供述するにとどまるものであって、これを裏付けるに足りる的確な証拠もないから、右供述から直ちに混同のおそれがあると認定することもできない。

四以上によれば、被告らの被告商品の製造販売行為は、不正競争防止法一条一項一号の規定に該当しないものというべきであるから、原告の被告らに対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、すべて理由がないものといわざるをえない。

第二反訴について

一被告信光精機と原告とが、いずれも光学機械機器具や測定機械の製造販売を業とする会社として競争関係にあることは、当事者間に争いがない。

二そこで、まず、原告代表者が、日経産業新聞の記者大村泰に対し、原告主張のような事実を陳述したか否かについて検討するに、原告代表者が、同記者に対し、被告商品について話をしたこと、日経産業新聞に、被告信光精機が主張するような記事が掲載されたことは、当事者間に争いがなく、右争いのない事実を総合すると、原告代表者は、同記者に対し、同被告の被告商品の製造販売行為が不正競争防止法一条一項一号の規定に該当するとの趣旨の陳述をし、その陳述内容が右新聞記事の中に掲載されたものと認められる。ところで、前示第一本訴についての認定判断によれば、同被告の被告商品の製造販売行為は、右規定に該当しないものというべきであるから、原告代表者の右陳述は、虚偽の事実の陳述に当たるものというほかはない。

三次に、原告代表者の右の陳述行為が故意又は過失に基づくものであるか否かについて検討するに、原告代表者が、被告信光精機の被告商品の製造販売行為が不正競争防止法一条一項一号の規定に該当しないことを知りながら、あえて右規定に該当する旨の陳述をしたとの事実を認めるに足りる証拠はない。そこで、続いて、過失の有無について審案するに、前示第一本訴についての認定判断に照らせば、原告代表者が、同被告の被告商品の製造販売行為が右規定に該当するものと誤信したことは、無理からないことであり、そのように誤信したことについて落度があるとまでいうことは困難であるといわざるをえない。すなわち、一般の取引者又は需要者において、不正競争防止法一条一項一号所定の「類似ノモノ」に当たらないことが明らかであると認めうる場合であればとも角、前示第一本訴についての認定判断にもみられるように、台座及び支柱の形態にしても、その認定に係る相違点を捨象すれば、原告商品は、原告の主張するような形態を有し、被告商品も、原告商品ほどに各稜線箇所に丸みはなく、どちらかといえば、角ばった感じがするものの、全体的には原告の主張するような形態を有するものと認められ、その限度においては、両商品の形態に類似性があるものといえるところであって、このような類似性があれば、原告代表者が右規定所定の「類似ノモノ」に当たると判断したことも、無理からないことであり、そのように判断したことに落度があるとまでいうことはできない。また、前示第一本訴についての認定判断中、原告代表者が韓国のある工場を訪問した際の認定事実に照らすと、原告が右規定所定の「混同ヲ生ゼシムル」場合に当たると判断したことも、無理からないことであり、このように判断したことに落度があるとまでいうこともできない。更に被告信光精機は、原告の下請企業で、下請協力会の会員であったことは、当事者間に争いがなく、右争いのない事実によると、原告が、同被告において原告商品に類似した被告商品を製造販売しようとしたものであると判断したことも、無理からないことであったといわざるをえない。そして、原告は、昭和六二年八月二六日、本件の原告訴訟代理人である弁護士に本訴の提起について訴訟委任をし、同弁護士は、同月二八日、本訴請求の原因記載のとおり、不正競争防止法一条一項一号、一条の二第一項の規定に基づく本訴を提起したことは記録上明らかであって、原告代表者は、同被告の被告商品の製造販売行為が同法一条一項一号の規定に該当すると判断したことについて、弁護士に相談し、その結果を踏まえて、本訴を提起し、右提起後の同年一〇月初め頃、前二のとおり、日経産業新聞の記者に対し、同被告の被告商品の製造販売行為が右規定に該当するとの趣旨の陳述をしたものである。以上の認定判断によれば、原告代表者が、同被告の被告商品の製造販売行為が右規定に該当するものと誤信したことは、無理からぬことであり、そのように誤信したことについて落度があるとまでいうことができないから、原告代表者が虚偽の事実を陳述したことについて過失があると認めることはできない。

四以上によれば、被告信光精機の反訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないものというべきである。

第三よって、原告の被告らに対する本訴請求及び被告信光精機の原告に対する反訴請求は、いずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官宍戸充 裁判長裁判官清永利亮は転補のため、裁判官髙野輝久は国内特別研究のため、署名捺印することができない。裁判官宍戸充)

別紙第一目録説明書

一 写真の説明

第1図はこの商品の斜視図、第2図は同上正面図、第3図は同上右側面図、第4図は同上左側面図、第5図は同上平面図、第6図は同上背面図である。

二 商品の目的及び機能

この商品は、微小、微細部品の形状・寸法の測定及び外観の検査を実施するために使用される測定顕微鏡と称される商品である。

そして、この商品は右目的を達成するために第一に被測定物をレンズ系をもって光学的に拡大して観察する機能を、第二に対物レンズ下に載置した被測定物を方向及び量を測定しながら縦横及び回転方向に移動させる機能を、第三に移動量を測定しながら鏡筒を上下動させる機能を有する。

三 商品の外部構造

(1) 概要

この商品は台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなる。

以下、各部の外部構造を添付説明図面に付した符号及び部品名称に従って説明する。

(2) ボデー部

ボデー部は装置全体を支える台座10及びこの後部に立設される支柱30を主たる構成部材とする。

右台座10の正面には電源を投入するためのメインスイッチ13が右方に、この投入状態を視認するためのパイロットランプ14が左方にそれぞれ並設される。

同じく右側面には反射若しくは斜光照明を調光するための調光つまみ15、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17、透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次コード用ソケット19が前方より後方に向かって横一列に順次並設される。

同じく左側面には透過若しくは斜光照明を調光するための調光つまみ16、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18、装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が前方より後方に向かって横一列に順次並設される。

同じく背面中央には被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この右上にはヒューズホルダー21が設けられる。

同じく平面には支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられる。

同じく底面には装置全体を支持するためのゴム足11が突設される。

次に、支柱30の正面には鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられる。

同じく平面には反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられる。

なお、以上のボデー部において台座10は幅一七〇mm、奥行き二三九mm、高さ(ゴム足11を含まない)八五mm、支柱30は台座10平面からの高さ二六〇mm、奥行き七一mmである。

(3) 鏡筒部

鏡筒部は支柱30に沿って上下に粗動するブラケット45及びこのブラケット45に沿って上下に微動する鏡筒40を主たる構成部材とする。

このブラケット45は光学系を構成する鏡筒40を上下動自在に正面に保持するとともに、背面に設けたアリ溝33を支柱30のアリ32に摺嵌することにより支柱30に対し上下動自在に保持される。

そして、このブラケット45の後方両側面にはブラケツト45を支柱30に対し上下動させるための粗動ハンドル46a、46bが対称的に突設され、同じく前方両側面にして右粗動ハンドルより上方位置には鏡筒40をブラケット45に対し上下動させるための微動ハンドル47a、47bが対称的に突設される。

同じく右側面にして微動ハンドル47aには、被測定物を斜め上方より照射するための斜光照明装置63が上部にリング状の係合部を有する取りつけアーム64を介して着脱自在に設けられる(但し、この斜光照明装置63は左側面の微動ハンドル47bに取りつけることもできる)。

同じく平面にはブラケツト45に対する鏡筒40の上下移動量を測定するためのダイヤルゲージ49が立設させる。

次に鏡筒40の正面には斜め上方に向かって接眼レンズ42が単眼チューブ41を介して着脱自在に突設される。

同じく左側面下方には光路を接眼レンズ42側若しくは反射照明装置62側に切り換える光路切り換えつまみ48が設けられる。

同じく平面には被測定物を上方より照射するための反射照明装置62が着脱自在に後部を露出して設けられる。

同じく底面には対物レンズ44が対物つなぎ43を介して着脱自在に突設される。

なお、以上の鏡筒部においてブラケット45は奥行き七一mm、鏡筒40は対物レンズ44の光軸よりの奥行き二〇mmであり、更に鏡筒部を最下方に移動させた場合のステージガラス55平面より接眼レンズ42の光軸先端までは距離一八〇mmである。

又、粗動ハンドル46a及び46bはブラケット45の底面より一九mm、背面より17.5mmの箇所に回転中心を、微動ハンドル47a及び47bは同じく五六mm、六〇mmの箇所に回転中心をそれぞれ有し、光路切り換えつまみ48は鏡筒40の底面より一七mm、背面より一六mmの箇所の回転中心を有する。

(4) 測定ステージ部

測定ステージ部は台座10上に載置固定される測定ステージ50及びこの測定ステージ50上に嵌入されるべきステージガラス55を主たる構成部材とする。

測定ステージ50は各々が可動する上中下のステージの積み重ねよりなり、台座10平面に載置固定した下レール68に対し下ステージ51が横方向に移動自在に摺嵌され、この下ステージ51上面に載置固定される中レール69には中ステージ52が縦方向に移動自在に摺嵌され、この中ステージ52上面には平面に回転ステージ54を回転自在に設けた上ステージ53が固定され、この回転ステージ54内には被測定物を載置すべきステージガラス55が嵌入される。

そして、測定ステージ50の正面にして中レール69には中ステージ52及び上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー57が突設され、同じく右側面にして下レール68には下ステージ51、中ステージ52、上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー56が突設される。

なお、以上の測定ステージ部において測定ステージ50は幅一二〇mm、奥行き一二〇mm、高さ(ステージガラス55を含む)四九mmであり、ステージガラス55は直径七二mmである。

別紙第二目録説明書

一 写真の説明

第1図はこの商品の斜視図、第2図は同上正面図、第3図は同上右側面図、第4図は同上左側面図、第5図は同上平面図、第6図は同上背面図である。

二 商品の目的及び機能

この商品は微小、微細部品の形状・寸法の測定及び外観の検査を実施するために使用される測定顕微鏡と称される商品である。

そして、この商品は右目的を達成するために第一に被測定物をレンズ系をもって光学的に拡大して観察する機能を、第二に対物レンズ下に載置した被測定物を方向及び量を測定しながら縦横及び回転方向に移動させる機能を、第三に移動量を測定しながら鏡筒を上下動させる機能を有する。

三 商品の外部構造

(1) 概要

この商品は台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなる。

以下、各部の外部構造を添付説明図面に付した符号及び部品名称に従って説明する。

(2) ボデー部

ボデー部は装置全体を支える台座10及びこの後部に立設される支柱30を主たる構成部材とする。

右台座10の正面には両側左右端に斜光照明を調光するための調光つまみ16及び反射若しくは透過照明を調光するための調光つまみ16が、この両つまみ間内側の左右に斜光照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18及び反射若しくは透過照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17が、更にその中央に電源を投入するためのパイロットランプ兼用のメインスイツチ13がそれぞれ横一列に並設される。

同じく背面中央には、被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この右上にヒューズホルダー21が、右下に装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が、左下に透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次コード用ソケット19がそれぞれ設けられる。

同じく平面には、支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられる。

同じく底面には、装置全体を支持するためのゴム足11が突設される。

次に、支柱30の正面には、鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられる。

同じく平面には反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられる。

なお、以上のボデー部において台座10は幅一七〇mm、奥行き二三九mm、高さ(ゴム足11を含まない)八五mm、支柱30は台座10平面からの高さ二六〇mm、奥行き七一mmである。

(3) 鏡筒部

鏡筒部は支柱30に沿って上下に粗動するブラケット45及びこのブラケット45に沿って上下に微動する鏡筒40を主たる構成部材とする。

このブラケット45は光学系を構成する鏡筒40を上下動自在に正面に保持するとともに、背面に設けたアリ溝33を支柱30のアリ32に摺嵌することにより支柱30に対し上下動自在に保持される。

そして、このブラケット45の後方両側面にはブラケット45を支柱30に対し上下動させるための粗動ハンドル46a、46bが対称的に突設され、同じく前方両側面にして右粗動ハンドルより上方位置には鏡筒40をブラケット45に対し上下動させるための微動ハンドル47a、47bが対称的に突設される。

同じく右側面にして微動ハンドル47aには、被測定物を斜め上方より照射するための斜光照明装置63が上部にリング状の係合部を有する取り付けアーム64を介して着脱自在に設けられる(但し、この斜光照明装置63は左側面の微動ハンドル47bに取り付けることもできる)。

同じく平面にはブラケット45に対する鏡筒40の上下移動量を測定するためのダイヤルゲージ49が立設される。

次に鏡筒40の正面には斜め上方に向かって接眼レンズ42が単眼チューブ41を介して着脱自在に突設される。

同じく左側面下方には光路を接眼レンズ42側若しくは反射照明装置62側に切り換える光路切り換えつまみ48が設けられる。

同じく平面には被測定物を上方より照射するための反射照明装置62が着脱自在に後部を露出して設けられる。

同じく底面には対物レンズ44が対物つなぎ43を介して着脱自在に突設される。

なお、以上の鏡筒部においてブラケット45は奥行き七一mm、鏡筒40は対物レンズ44の光軸よりの奥行き二〇mmであり、更に鏡筒部を最下方に移動させた場合のステージガラス55平面より接眼レンズ42の光軸先端までは距離一八〇mmである。

又、粗動ハンドル46a及び46bはブラケット45の底面より一九mm、背面より17.5mmの箇所に回転中心を、微動ハンドル47a及び47bは同じく五六mm、六〇mmの箇所に回転中心をそれぞれ有し、光路切り換えつまみ48は鏡筒40の底面より一七mm、背面より一六mmの箇所の回転中心を有する。

(4) 測定ステージ部

測定ステージ部は台座10上に載置固定される測定ステージ50及びこの測定ステージ50上に嵌入されるべきステージガラス55を主たる構成部材とする。

測定ステージ50は各々が可動する上中下のステージの積み重ねよりなり、台座10平面に載置固定した下レール68に対し下ステージ51が横方向に移動自在に摺嵌され、この下ステージ51上面に載置固定される中レール69には中ステージ52が縦方向に移動自在に摺嵌され、この中ステージ52上面には平面に回転ステージ54を回転自在に設けた上ステージ53が固定され、この回転ステージ54内には被測定物を載置すべきステージガラス55が嵌入される。

そして、測定ステージ50の正面にして中レール69には中ステージ52及び上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー57が突設され、同じく右側面にして下レール68には下ステージ51、中ステージ52、上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー56が突設される。

なお、以上の測定ステージ部において測定ステージ50は幅一二〇mm、奥行き一二〇mm、高さ(ステージガラス55を含む)四九mmであり、ステージガラス55は直径七二mmである。

別紙第三目録

謝罪広告

当社は、貴社に対し、貴社の製造販売した測定顕微鏡が、当社の特異な形態の測定顕微鏡と酷似し、混同を生じるとして不正競争防止法第一条第一項にもとずき、製造販売行為の差止と損害賠償を求める訴を東京地方裁判所に提起し、新聞紙上に公表いたしましたが、これは当社の全く誤った判断によるものであって、貴社の測定顕微鏡は右法に何ら抵触するものではありません。貴社の商品の名声を傷つけ、且つ貴社の信用を毀損したことは誠に申し分けなく、貴社に多大のご迷惑をおかけしましたことを謝罪します。

昭和  年  月  日

東京都板橋区志村二丁目二〇番九号

ユニオン光学株式会社

代表取締役 柳川邦衛

東京都板橋区大原町八番四号

信光精機株式会社 御中

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